商品先物で原油が大暴落!取引方法やマイナス価格の仕組みとは?

原油価格がマイナスになったとか、大暴落しただとか、なにかと話題の原油取引。ニュースや新聞なんかでも報じられ、なかには「安くなったなら今がチャンスでは?」なんて思う人もいるかもしれません。

でもちょっと待って。原油取引はそんなに簡単なものじゃないんです。巷では「個人投資家や初心者が手を出すべきじゃない」なんて言われるほど奥が深いものなんですよ。

そこでこの記事では、これから原油取引を始めようって人に向けて、今回の原油取引の種類から暴落発生の仕組みまで徹底解説。どうしてマイナス価格になったのか、マイナスになるとなにが起こるのかなどなど、詳しくご紹介していきます。

そもそも原油取引ってなに?種類と特徴

そもそも原油取引とは、その名の通り原油の売買のこと。商品取引所なんかを利用して、商品先物取引業者を通して行います。株取引の場合は証券取引所を利用し、証券会社を通して行うわけだから、流れとしては株取引と同じですね。

原油はバレルという単位で表され、1バレル=159リットル。また取引するときの単位は1ロットや1口ではなく、1枚2枚と数えるケースも多いです。

そんな原油取引だけど、取引方法がちょっと複雑。ということでまず最初に、原油取引でよく使われる方法を「先物」「CFD」「ETF」の3つに分けて解説していきます。

先物取引

先物取引とは、その名の通り「先」に価格を決めて取引すること。将来の価格をあらかじめ決めておき、期日までに取引する方法です

身近なものでたとえると、200万円の中古車が欲しいときその場で買えば200万円です。しかし1か月後に買いたい場合はどうでしょう?中古車価格は需要と供給によって変動するので、明日も明後日も同じ200万円とは限りませんよね。

そこで1か月後に200万円で買う約束を取り付ける、これが先物取引です。こうすることで1か月後に価格が250万円になっていても200万円で買うことができ、50万円の得をします。

反対に1か月後の価格が150万円に値下がりしてても約束の200万円で買わなきゃならないので、この場合は50万円の損をしちゃうんですよ。

実際の取引方法としては、売りと買いの両方から入れます。買いで入った場合は安く買って高く売ると利益が、売りで入った場合は高く売って安く買い戻すと利益がでます。

売りの部分がちょっと難しいけど、よく耳にする空売りってやつですね。1か月後に200万円で売るよって約束をし、1か月後になったら今度は買い戻す。このとき価格が150万円に下がっていれば差額の50万円が利益になります。反対に価格が250万円に値上がりしていたら50万円の損失ですね。

ちなみに先物取引の場合、決められた取引期日のことを限月(げんげつ)。たとえば限月が2020年1月であれば2020年1月31日が最終取引日の期日って感じに決まっています。

ロールオーバー

このようにちょっとややこしい先物取引だけど、ほかにもポイントがいくつかあります。そのひとつ目がロールオーバーってもの。これは期日を乗り換えることです

決済や売買をせず、このまま持ち越したいことってありますよね。とはいえさっき話した通り、必ず期日は来るもの。そんなとき期日の近い期近(きぢか)から先の期日である期先(きさき)へ乗り換えるのがロールオーバーです。

具体的には期近のぶんを売って期先のぶんを購入するってやり方ですね。このあと紹介するCFDやETFでも重要なので覚えておいてください!

コンタンゴとバックワーデーション

そしてふたつ目がコンタンゴとバックワーデーションってもの。これは先物取引での価格状態を表したものです。

まずコンタンゴとは、期近より期先のほうが価格が高くなる状態で、一般的なもの。これはなぜかっていうと、保管コスト込みで先物価格が決まるからです。簡単にいえば、1月に引き渡すより2月に引き渡すほうが1ヵ月分原油の保管コストがかかってるので高くなっちゃうってことですね。

反対に期近のほうが価格が高い状態になるのをバックワーデーション。天災などの異常事態で品薄状態になったりすると発生しやすくなります。

ちなみにコンタンゴは別名・順鞘(じゅんざや)、バックワーデーションは別名・逆鞘(ぎゃくざや)とも呼ばれてるんですよ。

CFD

続いてCFDとは、Contract For Differenceの頭文字をとった略称。日本語にすると差金決済取引って呼ばれ、先物取引と同じく売りと買いの両方のポジションから入れます。

一般的な株取引だと現金で株を買い、購入代金より高くなったときに株を売ると利益がでますよね。しかしCFDの場合は最初から差額金のみでしか決済しません

もっと詳しくいうと、まず証拠金っていうお金を預けます。するとこの証拠金だけで売買ができ、差額金だけ支払うor受け取れるんですよ。たとえば10万円の商品を買い付ける場合、通常なら10万円が必要だけど、CFDならわずかな証拠金だけで済むわけです。

ちなみにCFDには先物取引のような期日がないのも特徴。そのため長期保有するとこの期日の乗り換えであるロールオーバーが自動的に行われます。

このとき注意したいのが、価格調整額ってやつで、これはロールオーバーしたときに発生した価格差を調整するためのもの。あくまでこれは調整のためなので最終的に損益にはあまり関係しないんだけど、以下のように支払いor受け取りになるので覚えておきましょう。

  • 【ロールオーバー後の価格が上がってる場合】…買いポジションではマイナス、売りポジションではプラス
  • 【ロールオーバー後の価格が下がってる場合】…買いポジションではプラス、売りポジションではマイナス

ETF

最後のETFとは、Exchange Traded Fundの頭文字をとった言葉。日本語に訳すと、上場投資信託って呼ばれてます。一般的な投資信託との違いはこの「上場」ってところで、上場してるぶん株式投資のような感覚で取引が可能。また原油はもちろん株式関連が多いのも特徴で、たくさんの種類があります。

そして原油ETFの場合は、原油価格に連動するのを目標として運用されるもの。ETFを利用すれば、個人でも小額から簡単に原油取引へ参入することができちゃうんですよ。

ちなみにこの原油ETFにも、もちろんロールオーバーはあるもの。長期保有すればするほど、ロールオーバーを繰り返していくんですね。

そこで注意したいのが、長期保有する場合。コンタンゴの状態でロールオーバーすると、どんどん目減りしていっちゃうんです。簡単にたとえると、今100円のものを売って500円のものに買い替えるわけですから、ちょっとずつ損してくんですよね。

そのため一般的なETFでは長期運用が向いてるのに対し、原油などのETFでは短期保有がおすすめといえるでしょう。

2020年4月に原油大暴落が起きた仕組み

原油取引について覚えたら、ここからが本題。つい最近発生した、2020年4月20日の原油大暴落です。ニュースや新聞でも大きく取り上げられましたよね。

これは新型コロナウイルスの影響によるものが大きな理由なんだけど、具体的にはどんな仕組みで起きたのでしょうか。ここからは詳しく掘り下げながら、今回の原油大暴落について解説してきます。

原油がマイナス価格ってどういうこと?

そもそも今回暴落したのは、WTI原油ってもの。アメリカのテキサス州の油田で取れる原油の総称で、West Texas Intermediateの頭文字をとってます。WTI原油は高品質なことから取引量が多く、世界の指標としても有名なんですよ。

そんなWTI原油がマイナス価格になったわけだけど、まず注目したいのが「原油のマイナス価格ってなに?」ってところ。そもそもマイナス価格ってなんなのでしょうか。「0円で底じゃないの?」なんて思っちゃうけど、実際には一時−40.32ドル、最終的に-37.63ドルになりました。

これはどういう状況かっていうと、買い手は原油だけでなくお金も受け取れるってこと。通常であればお金と原油を交換するのが正常な取引だけど、マイナス価格では売り手が商品+お金を支払い、買い手は商品+お金を受け取ることになります

じゃあなぜこんな異常事態になったといえば、新型コロナウイルスの影響で原油の需要が減ったから。工場の閉鎖なども相次ぎ、使用量が減ったため、余った原油の保管場所すらない状態だったんですね。

さらにこの4月20日は、5月物っていう4月21日までに取引を終える予定の前日。つまり決算の前日です。そこで実際に原油を貰っても困る投資家たちが一斉に売りに転じ、売りはあるのに買い手はつかない状況からここまでのマイナス価格になったってわけです。

つまりひと言でいえば、原油の押し付け合いが起きたってことですね

DMMとGMOで発生したトラブル

さらにもうひとつ忘れちゃいけないのが、DMMとGMOで発生したトラブル。このトラブルによって、とくにCFD取引ではさらなる大損失の被害者が発生しました。

なにが起きたかっていうと、ひと言でいえばこの異例のマイナス価格に各社が対応できなかったってこと。具体的には、以下のような流れで突然のロールオーバーが行われたんです。

  • 【DMM】…4月21日未明に0.930ドルでレート配信が停止→配信再開した朝には6月限へロールオーバーが行われ約20ドルに上昇!
  • 【GMO】…期近である5月限の期日が4月21日だったが4月17日の段階で6月限へロールオーバー完了→しかしたったの3営業日しか経ってない4月22日に7月限へ異例のロールオーバー

で、ここで発生したのがロスカット。このロスカットっていうのは強制決済のことで、自分で決済しなくても勝手に決済されちゃうものです

上のほうでも書いた通りCFDは証拠金だけで取引ができるんだけど、この証拠金の割合が事業者が定めた基準を下回るとロスカットされちゃうんですね。そのロスカットがこのロールオーバーによって大量発生しました。

じゃあいったいなぜそんなことになったかっていうと、CFDは売りから入れるってのがポイント。売りから入る場合は価格が下がると利益になるって紹介しましたが、このときはロールオーバーが行われたせいで0ドル(実際は-40ドル)から20ドルへと暴騰しましたよね。

結果として売りで入ってた人のなかには強制決済であるロスカットが行われ、そのまま大損失を抱えてしまったんです

ちなみに通常であれば証拠金がマイナスになる前にロスカットされちゃうんですが、不測の事態が起きたりロスカットまでの時間が掛かったりするとマイナスになることもあるのでさらに注意が必要です。

実際に大損失した人のツイート

このような流れで、原油取引をしてた人はパニックに。実際にツイッターを見てみても、今回の原油価格マイナスやトラブルに遭って大損失した人もたくさんいました。

いくつかピックアップしてみたけど、なかには有名な投資家さんや起業家さんなんかもいて、それほど予測が難しい異常事態だったってのがわかります。

歴史から学ぶ!過去に起きた原油の暴落

ここまでご紹介してきた通り、歴史的な大暴落が起こった原油。でも原油価格の暴落はなにも今回がはじめてじゃありません。過去にも同じように大暴落は発生してます。

有名なものだと2008年のリーマンショックのときでしょうか。それまで1バレル約140ドルとかつてないほどの急騰していた原油価格が、リーマンブラザーズの破綻で100ドルほどまで下落。その後も時間が経つごとにに下落し続け、一時は30ドルまで大暴落してしまったんです。

また記憶に新しいものでは、2015年頃の原油価格の暴落も有名ですね。このときはいろんな要因があったのでちょっと説明すると、そもそも当時は世界的に景気が低迷し、原油の需要が減っていました。そんなときにアメリカが自国で原油生産ができるようになるシェール革命ってのが起きたんです。

これにより、それまで原油の減産をすると思われてた石油出国機構(OPEC)の加盟国が減産を行わず…。「シェール革命に反発したのでは?」なんて言われてるけど、結果として原油が過剰な状態になったんですね。まさに複数の事情や思惑が交差して、原油価格の暴落が起きたってことでしょう

このように歴史をたどっていくと、原油価格の暴落はそこまで珍しいものじゃありません。今回ほどの悲惨な状況じゃないにしても、なにか不測の事態が発生すれば、またいつ起きてもおかしくないんです。

もちろんこれは投資全般に言えることだけど、原油取引はリスクと隣り合わせだってことを覚えておいてくださいね。

原油先物をやるなら下調べを怠るべからず!

今回は原油取引や2020年4月に起きた原油の大暴落について詳しくお伝えしてきました。

ここまで読んでもらえばわかるように、原油取引はとっても難しく奥の深いもの。実際に原油取引を始めるためには、もっとたくさんの下調べと適切なリスク管理が必要です。

これから原油取引をやってみようって人は今回ご紹介したような大暴落が発生する可能性をしっかり理解し、大損害を被らないよう気を付けてくださいね。