宅急便や長距離トラック、コンテナ船などなど、見かける機会も多い陸運・海運業。私たちの生活に直結している業種ですよね。
今回はそんな陸運・海運業をピックアップ。業種の特徴から株式市場での位置づけ、他業種との比較や代表的な上場企業銘柄まで、大ボリュームでご紹介していきます。
目次
陸運・海運業の特徴
それではまず陸運・海運業とはどんなものなのか。仕事内容や特徴などをそれぞれご紹介していきます。
陸運業
まず陸運業ですが、列車や自動車などを使って人や荷物を運送するもの。陸上運送を略したもので、よく見かける長距離トラックや鉄道を使う貨物列車、また私たちが普段利用する電車である旅客鉄道も陸運業のひとつですね。
また陸運業と一口に言っても、大きく長距離を運べる鉄道輸送と線路のない場所まで届けられる自動車輸送に分けられます。
とくに自動車輸送ではスーパーに並ぶ生鮮品を運んだり、ネットショップで購入した商品を届けたり、消費者に近い存在といえるでしょう。
海運業
次に海運業ですが、これは船舶を使って人や荷物を運送するもの。海上運送の略で、なかでも海外と日本をつなぎ荷物を運ぶのがメインです。
代表的なものでいえば原油や天然ガスなどなど。日本は多くを海外からの輸入に頼っていますから、欠かせない存在なんですよ。
陸運業が国内メインなのに対し、海運業はもっと世界規模で活躍してる業界っていえますね。
陸運・海運業は株式市場でどんな位置づけ?
そんな陸運・海運業ですが、株という面で見るとまた少し違った顔が見えてきます。そこでここからは株式市場ではどんな位置づけなのか、それぞれご紹介していきますね。
陸運業
さっきもご紹介したとおり、陸運業には大きく自動車輸送と鉄道輸送があります。そのためそれぞれ株式市場での位置づけもちょっと変わってくるんですよ。
まず自動車輸送関連ですが、日本通運やヤマトHDといった物流が多く、景気に左右されやすいのが特徴。景気が良く消費が増えれば輸送も増えますし、景気が悪化し消費が減れば輸送も減ってしまいます。
対する鉄道輸送関連は、東日本旅客鉄道株式会社や東急など旅客事業も大きく、ディフェンシブ銘柄として有名です。つまり比較的安定した銘柄ってことですね。
海運業
続いて海運業の位置づけについて。
海運業では貨物の輸送からフェリーなどの旅客までさまざまですが、旅客の規模は小さめ。つまり、業界全体でいえば貨物の輸送が大きな割合を占めているってことですね。
また景気に左右されやすいシクリカル銘柄というのもポイント。ハイリスクハイリターンになりがちなので、注意が必要でしょう。
とくに海賊などの脅威や新型コロナウイルスのような疫病など、航路に関わるリスクは影響大なので、気を付けてくださいね。
成長性・配当など他業種との比較
続いては陸運・海運業の成長性や配当など。実際陸運・海運業の銘柄はどうなのか、最新のニュースや他業種との比較を踏まえながら詳しく解説していきます。
成長性
まずはそれぞれの成長性から。頭打ちになる業種やコロナ禍の影響が残る業種も多い中で、陸運・海運業ともに成長性ありといえそうです。
陸運業ではとくに巣ごもり需要で宅急便などの自動車輸送が好調。物流業務を一括で請け負う3PLなども注目されており、今後も期待大でしょう。
またコロナ禍の影響を受けていた鉄道輸送関連も、go toトラベルなどの国内旅行やコロナ終息でインバウンド需要が増えれば十分持ち直せるはずです。
海運業のほうもコロナ終息が見えてきた現在、コンテナ船などをはじめとした海運業の注目度も高め。またクリーンエネルギーに力を注ぐ中、今後もさらなる活躍が期待できます。
配当利回り
次に配当についてですが、これは実際にほかの業種と比較してみていきましょう。今回は比較対象として、昨今話題性がありそれぞれ異なる4つの業種をピックアップしてみました。
- 少し業種の似ている【倉庫・運輸関連業】
- オリンピック特需で注目度の高かった【建設業】
- コロナ禍で打撃を受けた【小売業】
- テレワークなどの需要のあった【情報・通信業】
そして業種ごとの代表的な企業として売上高の高い上位5銘柄に着目し、バフェットコードから配当利回り(会予)を比較しています。
陸運業 | 海運業 | 倉庫・運輸関連業 | 建設業 | 小売業 | 情報・通信業 |
---|---|---|---|---|---|
日本通運 2.1% |
日本郵船 3.5% |
近鉄エクスプレス 2.1% |
大和ハウス工業 3.8% |
イオン 1.2% |
日本電信電話 3.8% |
東日本旅客鉄道 1.2% |
商船三井 2.8% |
上組 2.4% |
積水ハウス 3.8% |
セブン&アイ・HD – |
ソフトバンクG 0.6% |
ヤマトホールディングス 1.5% |
川崎汽船 – |
三井倉庫HD 2.4% |
鹿島建設 3.7% |
ファーストリテイリング 0.6% |
KDDI 3.6% |
SGホールディングス 1.2% |
NSユナイテッド海運 – |
三菱倉庫 2.3% |
大林組 3.5% |
ヤマダHD – |
ソフトバンク 5.9% |
日本通運株式会社 1.0% |
飯野海運 3.7% |
住友倉庫 3.1% |
大東建託 3.9% |
パン・パシフィック・インターナショナルHD 0.7% |
エヌ・ティ・ティ・データ 1.1% |
これを見ると、陸運業と海運業では海運業の方が配当利回りが高めですね。
またほかの業種と比較すると、建設業や海運業、情報・通信業が高めで、小売業が全体的に低めとなっています。
もちろん企業によっても異なりますし、業種は同じでも事業内容によって明暗はわかれますが、配当利回りで選ぶならこれらの業種がいいでしょう。
陸運・海運業の代表的な上場企業銘柄10選
それでは最後に、陸運・海運業の代表的な上場企業銘柄をご紹介。今回はそれぞれ売上高の高い順に上位5銘柄ずつ、計10銘柄をご紹介していきますよ。
1. 日本通運株式会社(9062)
- 東証1部
- 時価総額7,828億円
- 2021年3月期売上高2兆791憶9500万円
- 2021年3月期営業利益781億円
- PER(予)20.1倍/PBR1.3倍
陸運業の代表銘柄といえばまずは「日本通運株式会社」。国内輸送のみならず国際輸送なども手掛ける企業です。
よく見かけるトラック輸送をはじめ、鉄道輸送や海上輸送、航空輸送まで展開しているんですよ!
また同社ではほかにも、引っ越しなどの専門輸送から、国内の倉庫保有面積1位という倉庫保管の分野まで、幅広く活躍しています。
過去一か月の直近高値では2021年6月4日が9,160、同じく直近安値では2021年6月21日が8,320となっています(2021年6月29日現在)。
2. 東日本旅客鉄道株式会社(9020)
- 東証1部
- 時価総額3.09兆円
- 2021年3月期売上高1兆7645憶8400万円
- 2021年3月期営業利益-5203億5800万円
- PER(予)85.8倍/PBR1.2倍
陸運業の中でも鉄道関連として誰もが知っている「東日本旅客鉄道株式会社」。JR東日本として山手線や東北新幹線などでおなじみの企業ですね。
旅客事業も有名ですが、貨物鉄道事業も有名。これは駅で見かける貨物列車などのことですね。
またほかにも同社では旅行業から倉庫業まで幅広く展開し、私たちの生活に欠かせない企業となっています。
過去一か月の直近高値では2021年6月10日が8,569、同じく直近安値では2021年5月31日が7,603となっています(2021年6月29日現在)。
3. ヤマトホールディングス株式会社(9064)
- 東証1部
- 時価総額1.15兆円
- 2021年3月期売上高1兆6958憶6700万円
- 2021年3月期営業利益921億2100万円
- PER(予)21.6倍/PBR2.0倍
「ヤマトホールディングス株式会社」は、あのクロネコヤマトの宅急便でおなじみの企業ですね。宅配便サービスでは国内シェア1位を獲得しています。
そんな同社では大きく分けて、リテール部門と法人部門の2つを事業展開。リテール部門では宅急便を主軸とし、法人部門では3PLのさらに上を行くパートナーとしてLLP(Lead Logistics Partner)の展開もしているんですよ。
過去一か月の直近高値では2021年6月29日が3,190、同じく直近安値では2021年6月11日が2,928となっています(2021年6月29日現在)。
4. SGホールディングス株式会社(9143)
- 東証1部
- 時価総額1.79兆円
- 2021年3月期売上高1兆3120憶8500万円
- 2021年3月期営業利益1017億2600万円
- PER(予)24.1倍/PBR4.5倍
「SGホールディングス株式会社」は、宅急便の佐川急便でおなじみの企業。上のヤマトホールディングス株式会社と同じく、宅配サービス大手ですね。
そんな同社ではロジスティクス事業として、物流業務を請け負う3PLも展開。またほかにも不動産事業など、多くの事業を手掛けているんですよ。
過去一か月の直近高値では2021年6月29日が2,925、同じく直近安値では2021年6月2日が2,390となっています(2021年6月29日現在)。
5. 東急株式会社(9005)
- 東証1部
- 時価総額9,400億円
- 2021年3月期売上高9359憶2700万円
- 2021年3月期営業利益-316億5800万円
- PER(予)94.0倍/PBR1.3倍
「東急株式会社」は、東急グループとしてさまざまな事業を展開している企業。なかでも陸運業として注目なのが交通事業です。
私鉄大手の私鉄大手の東急電鉄を展開していて、東横線や田園都市線など利用したことがある人も多いんじゃないでしょうか。
またほかにも踊り子号でおなじみの伊豆急行やローカル線である上田電鉄なども展開しているんですよ。
過去一か月の直近高値では2021年6月10日が1,657、同じく直近安値では2021年6月1日が1,459となっています(2021年6月29日現在)。
6. 日本郵船株式会社(9101)
- 東証1部
- 時価総額9,473億円
- 2021年3月期売上高1兆6084憶1400万円
- 2021年3月期営業利益715億3700万円
- PER(予)6.8倍/PBR1.5倍
誰もが知ってる大手海運会社の「日本郵船株式会社」。さまざまな事業を展開していますが、なかでも注目なのが定期船事業であるコンテナ船です。
商船三井や川崎汽船と協力することで、より広範囲をカバー。世界最大級ともされる航路を駆使し、多くの国をつないでいるんですよ。
また同社では客船事業も有名で、あの豪華客船で有名な飛鳥Ⅱも展開しています。
過去一か月の直近高値では2021年6月23日が5,800、同じく直近安値では2021年5月31日が4,415となっています(2021年6月29日現在)。
7. 株式会社商船三井(9104)
- 東証1部
- 時価総額6,268億円
- 2021年3月期売上高9914憶2600万円
- 2021年3月期営業利益-53億300万円
- PER(予)3.0倍/PBR1.1倍
こちらもまた言わずと知れた海運大手である「株式会社商船三井」。
鉄鉱石や肥料などを運ぶドライバルク船をはじめ、液化天然ガスを運ぶLNG船、原油などを運ぶ油送船など、挙げればきりがないほどさまざまな製品を運んでいる企業です。
いずれも最新技術やノウハウを駆使し、幅広いニーズに対応しているんですよ。
また同社ではフェリーなどの客船事業も有名で、日本国内を結ぶさんふらわあなど、運航しています。
過去一か月の直近高値では2021年6月23日が5,420、同じく直近安値では2021年5月31日が4,300となっています(2021年6月29日現在)。
8. 川崎汽船株式会社(9107)
- 東証1部
- 時価総額3,628億円
- 2021年3月期売上高6254憶8600万円
- 2021年3月期営業利益-212億8600万円
- PER(予)1.9倍/PBR1.7倍
海運大手企業らしい貫禄で多種多様なものを運ぶ「川崎汽船株式会社」。まさになんでも運べると言っても過言ではありません。
具体的には、私たちの生活にも欠かせないコンテナ船から石炭や穀物を運ぶドライバルク船、液化天然ガスを運ぶLNG船。
さらには原油などを運ぶ油槽船に、その名の通り自動車を運ぶ自動車船まで運航しているんですよ。
過去一か月の直近高値では2021年6月23日が3,990、同じく直近安値では2021年5月31日が2,876となっています(2021年6月29日現在)。
9. NSユナイテッド海運株式会社(9110)
- 東証1部
- 時価総額561億円
- 2021年3月期売上高1384憶5400万円
- 2021年3月期営業利益67億3600万円
- PER(予)7.0倍/PBR0.6倍
さまざまな輸送サービスを提供している「NSユナイテッド海運株式会社」。
それぞれ鉄鋼原料輸送サービス・資源エネルギー輸送サービス・不定期船サービス・近海水域サービスを展開しています。
なかでもバルカーことばら積み貨物船は主力で、鉄鉱石や鋼材などを運んでいるんですよ。
過去一か月の直近高値では2021年6月28日が2,483、同じく直近安値では2021年5月31日が2,072となっています(2021年6月29日現在)。
10. 飯野海運株式会社(9119)
- 東証1部
- 時価総額474億円
- 2021年3月期売上高889憶1600万円
- 2021年3月期営業利益68億3100万円
- PER(予)7.9倍/PBR0.6倍
1899年に創業した「飯野海運株式会社」。以来石炭運送から始まり、現在でも原油からLPG、ケミカル製品までさまざまな貨物を運んでいるんですよ。
それだけに運航している船舶も豊富で、2020年6月30日時点で現在大型原油タンカーから大型ガス船、ケミカルタンカーなどなど全部で112隻も運航しているんだとか。
また同社では不動産業にも力を入れており、ビルの賃貸や倉庫業など幅広く手掛けています。
過去一か月の直近高値では2021年6月23日が473、同じく直近安値では2021年5月31日が421となっています(2021年6月29日現在)。
陸運・海運業の今後に期待大!
今回は陸運・海運業について詳しくご紹介してきました。
陸運・海運業といっても事業内容などによって株式市場においての位置づけも変わってくるもの。新型コロナウイルスワクチンの広まりによって、今後の期待値も高くなっているので要チェックです。
ぜひみなさんもこの機会に、陸運・海運業関連の銘柄やニュースに注目してみてくださいね。