セルインメイの格言は当たる?日経平均とNYダウの株価を比較検証! 

投資家にとっていわずと知れたアノマリー「セルインメイ」。先人の知恵が詰まった言葉として、今も受け継がれていますよね。

でもこれって、本当に信用してしまって大丈夫なんでしょうか。

そこで今回は、セルインメイは当たっているのかどうか、日経平均株価とNYダウの2つから検証!2000年〜2020年までのデータをもとに、詳しく比較していきますよ!

セルインメイとは?いったいどんな意味なの?

セルインメイを検証する前に、セルインメイってどんなものなのかまずは簡単にご紹介します。

そもそもセルインメイとは、有名なアノマリーのひとつ。アノマリーっていうのは相場の経験則のことで、日本でいう相場格言みたいなもの。先人の知恵が詰まった言葉ってやつですね。

アメリカ生まれの言葉で英語で書くと「Sell in May」、日本語では「株は5月に売れ」って意味になります

ちなみに本来はもう少し長めで「Sell in May,and go away; don’t come back until St Leger day.」。日本語に訳すと「株は5月に売って立ち去り、セント・レジャー・デー(9月の第2土曜日)まで戻ってきてはいけない」って言葉なんだとか。

これはなんでかっていうと、NYダウは5月をピークに6月にかけて下落することが多く、9月の第2土曜日ごろには株価が戻るといわれてるから。

だから5月のうちに売ってしまおう、そして5月で売ったら9月の第2土曜日ごろまで相場を離れましょうって意味なんですよ。

日経平均でセルインメイを検証

それではいよいよここから、実際にセルインメイは正しいのかを検証していきます。

まずは日本の代表的な株価指数・日経平均株価を軸に、「5月の月足の陰線・陽線のデータ」「5月と8月の月足の比較」「9月に買った場合の3・6ヶ月後」の3つのポイントから検証していきますよ。

5月の月足はどうなってる?

まずは5月の月足をチェック。2000~2020年の期間中5月の月足はどうなっていたのか、陰線・陽線を確認してみました。

ちなみにこの月足とは、1つのローソク足で月初めの始値、月最終の終値、月の高値、月の安値を表したもの。始値は月初めの値段、終値は月最終日の終値(引け値)になっていて、1か月分ごとに見られるんですよ。

そして陰線・陽線っていうのはローソク足で色分けされて見られるもので、始値より終値の方が安ければ陰線、始値より終値の方が高ければ陽線となっています。

結果、2000~2020年までの間で陰線が10回、陽線が11回ありました。どちらも半々くらいの比率ですね。

年数 陽 or 陰線 始値 高値 安値
2000 陰線 17979.00 18586.00 15870.00
2001 陰線 14096.32 14556.00 13468.73
2002 陽線 11540.09 12074.03 11285.21
2003 陽線 7804.03 8453.43 7758.01
2004 陰線 11777.44 11785.26 10489.84
2005 陽線 10954.21 11302.52 10788.59
2006 陰線 16929.83 17375.25 15442.53
2007 陽線 17396.30 17875.75 17203.03
2008 陽線 13802.59 14392.53 13540.68
2009 陽線 8848.84 9522.50 8827.13
2010 陰線 10847.90 10847.90 9395.29
2011 陰線 9964.39 10017.47 9406.04
2012 陰線 9471.66 9472.25 8455.13
2013 陰線 13837.72 15942.60 13555.66
2014 陽線 14341.09 14744.16 13964.43
2015 陽線 19510.85 20655.33 19257.85
2016 陽線 16357.10 17251.36 15975.47
2017 陽線 19154.03 19998.49 19144.62
2018 陰線 22453.42 23050.39 21931.65
2019 陰線 22184.40 22190.49 20581.58
2020 陽線 19991.97 21955.44 19448.93

5月と8月の月足の比較

続いては5月と8月の月足について。セルインメイでは5月に売って9月の第2週まで戻ってきてはいけないと言っていますから、これが正しければ夏ごろにかけて株価は下がっているはずですよね。

そこでここでは、5月と8月の月足を終値で比較。結果、5月と8月の月足を比較して8月の方が上がっているものと8月の方が下がっているものは、ほぼ半々でした

たとえば以下の1枚目2010年、2枚目2016のチャートでは5月ごろから下がり始め、5月より8月の方が下がっています。そして9~10ごろにかけて株価が上がっており、まさにセルインメイを表したようなチャートですよね。

引用元:TradingView

引用元:TradingView

反対に以下の2014年のチャートでは下がらずに上がっていっていました。

引用元:TradingView

今回はとくにわかりやすい例を挙げていますが、変動幅は小さくともほぼ半分の確立。そのためこの点でいえば、セルインメイは過信禁物となりそうですね

9月に買ってから3・6ヶ月後の株価は?

そして最後の検証は、9月に買ったあと、実際の株価はどう変動するのかについて。3か月後である12月と6か月後である翌3月の日経平均株価の月足を調べてみました。

まずは以下の一覧表を見てみてください。

年数 9月の始値/高/安 12月の高/安値 3月の高/安値
2000 16915.00/17018.00/15621.00 15273.00/13183.00 13867.58/11434.00
2001 10729.60/10812.89/9382.95 11052.51/10170.90 12034.04/10540.31
2002 9564.90/9833.01/9001.69 9320.11/8256.52 8509.43/7824.82
2003 10668.58/11160.19/10173.54 10681.28/9859.00 11869.00/11045.94
2004 11104.85/11357.85/10737.78 11500.95/10721.59 11975.46/11506.85
2005 12501.43/13678.44/12498.40 16445.56/14880.18 17116.79/15553.14
2006 16072.81/16414.94/15513.87 17301.69/16185.92 17558.04/16532.91
2007 16511.07/16929.26/15610.65 16107.65/14998.01 13413.63/11691.00
2008 12936.81/12940.55/11160.83 8859.56/7849.84 8843.18/7021.28
2009 10453.37/10577.19/9971.05 10707.51/9233.20 11147.62/10116.86
2010 8833.32/9704.25/8796.45 10394.22/9918.55 10768.43/8227.63
2011 9017.01/9098.15/8359.70 8729.81/8272.26 10255.15/9509.10
2012 8836.61/9288.53/8646.03 10433.63/9376.97 12650.26/11464.71
2013 13438.07/14817.50/13407.53 16320.22/15112.54 15312.60/14203.21
2014 15454.59/16374.14/15440.99 18030.83/16672.94 19778.60/18577.06
2015 18763.72/18777.47/16901.49 20012.40/18562.51 17291.35/15857.37
2016 16885.16/17156.36/16285.41 19592.90/18227.39 19668.01/18909.26
2017 19733.57/20481.27/19239.52 22994.33/22119.21 21971.16/20347.49
2018 22819.17/24286.10/22172.90 22698.79/18948.58 21860.39/20911.57
2019 20625.75/22255.56/20554.16 24091.12/23044.78 21719.78/16358.19
2020 23089.63/23622.74/22878.71 27602.52/26327.08 30485.00/28308.57

この表を見るとわかるように、数回を除いて12月時点で9月より株価が上がっているものが多め。遅くとも翌3月までには概ね上がっていますよね

セルインメイの原文でも「セント・レジャー・デー(9月の第2土曜日)まで戻ってきてはいけない」と言っていますが、9月以降上がっている=この部分はほぼ当たっているといえそうです。

とはいえこれには注意点もあるので、実際のチャートを見てみましょう。

まずこちらが順当に株価が上がっているケース。1枚目が2005年9月に買ったとき、3か月後の12月と6か月後の2006年3月までのチャート。2枚目が2014年9月に買ったとき、3か月後の12月と6か月後の2015年3月までのチャートです。

引用元:TradingView

引用元:TradingView

そしてこちらが12月までは上昇していっているものの、春先にかけて下がっているケース。

1枚目が2010年9月に買ったとき、3か月後の12月と6か月後の2011年3月までのチャート、2枚目が2015年9月に買ったとき、3か月後の12月と6か月後の2016年3月までのチャート。

3枚目が2017年9月に買ったとき、3か月後の12月と6か月後の2018年3月までのチャートです。

引用元:TradingView

引用元:TradingView

引用元:TradingView

数は多くないものの、実はこの春先にかけて少し下がっているケースがいくつか見受けられました

考えられる理由は2つあって、ひとつが3月ごろはちょうど決算シーズンで変動しやすいから。

そしてもうひとつが、3~4月ごろは追加納税が必要な人にとって現金を用意する必要があり、時期的に押し目と呼ばれる一時的な下落が起きやすいからです。

そのため結論としては、9月に買うと上がるケースが多いけど、3月ごろは注意が必要といえそうです。

NYダウでセルインメイを検証

お次はNYダウを軸にセルインメイを検証。さっきと同じように、「5月の月足の陰線・陽線のデータ」「5月と8月の月足の比較」「9月に買った場合の3・6ヶ月後」の3つを検証していきますよ。

5月の月足はどうなってる?

こちらもまずは5月の月足をチェック。2000~2020年の期間中5月の月足はどうなっていたのか、日経平均株価と同じように陰線・陽線を確認していきます。

結果、2000~2020年までの間で陰線が9回、陽線が12回ありました。どちらも半々くらいの比率ですね。2010年までは陰線と陽線交互でしたが、2013年以降は2019年を除きすべて陽線となっています。

年数 陽 or 陰線 始値 高値 安値
2000 陰線 10733.91 10971.24 10258.81
2001 陽線 10734.05 11350.05 10673.22
2002 陰線 9944.90 10353.43 9802.23
2003 陽線 8478.48 8868.33 8340.23
2004 陰線 10227.27 10386.32 9852.19
2005 陽線 10192.00 10560.81 10075.55
2006 陰線 11367.78 11670.19 11030.47
2007 陽線 13062.75 13673.07 13041.30
2008 陰線 12818.34 13136.69 12442.59
2009 陽線 8167.41 8591.93 8099.31
2010 陰線 11009.60 11177.67 9774.48
2011 陰線 12810.16 12876.00 12309.52
2012 陰線 13214.16 13338.66 12311.56
2013 陽線 14839.80 15542.40 14687.05
2014 陽線 16580.26 16735.51 16341.30
2015 陽線 17859.27 18351.36 17733.12
2016 陽線 17783.78 17934.61 17331.07
2017 陽線 20962.73 21112.32 20553.45
2018 陽線 24117.29 25086.49 23531.31
2019 陰線 26639.06 26689.39 24809.51
2020 陽線 24120.78 25758.79 22789.62

5月と8月の月足の比較

続いては5月と8月の月足を比較。セルインメイが正しければ夏ごろに株価は下がっているはずですが、NYダウではどうなのでしょうか。

ここでも日経平均と同じように、5月と8月の月足を終値で比較してみました。結果、わずかですが5月より8月の方が上がっている年が多めでした

わかりやすいケースでご紹介すると、たとえば以下の2009年のチャートのように、ずっと上がっていくケースもあります。

引用元:TradingView

とはいえ差はわずか。5月より8月の方が上がっているもの、5月より8月の方が下がっているもの、それぞれどちらかだけがすごく多いってわけじゃありません

実際、以下の2011年のチャートではセルインメイを表すような動きもしています。

引用元:TradingView

そのため結論から言うと、この部分でいえばセルインメイを当てにしすぎはよくないといえるでしょう

9月に買ってから3・6ヶ月後の株価は?

そしてセルインメイの検証最後の項目は、こちらも日経平均の検証と同じく、9月に買ったあと実際の株価はどう変動するのかについて。

3か月後である12月と6か月後である翌3月のNYダウの月足を調べてみます。

年数 9月の始値/高/安 12月の高/安値 3月の高/安値
2000 11276.51/11401.19/10567.32 10917.68/10299.21 10859.50/9106.54
2001 9946.98/10182.38/8062.34 10184.45/9703.90 10673.10/10111.04
2002 8659.27/8726.90/7460.78 9043.37/8242.91 8522.18/7416.64
2003 9416.67/9686.08/9230.47 10462.44/9785.35 10695.55/10007.49
2004 10170.12/10363.36/9977.92 10868.07/10418.63 10984.46/10396.24
2005 10481.44/10701.81/10350.96 10940.34/10709.42 11334.96/10922.73
2006 11382.75/11741.99/11323.84 12529.88/12089.98 12511.05/11939.61
2007 13358.39/13924.81/13021.93 13780.11/13092.00 12622.07/11731.60
2008 11545.63/11790.17/10365.45 9026.41/8118.50 7931.33/6469.55
2009 9492.32/9917.99/9252.93 10580.33/10235.63 10955.48/10326.10
2010 10016.01/10948.88/10016.01 11625.00/11007.23 12383.46/11555.48
2011 11613.30/11716.84/10597.14 12328.47/11735.19 13289.08/12734.86
2012 13092.15/13653.24/12977.09 13365.86/12883.89 14585.10/13937.60
2013 14801.55/15709.58/14777.48 16588.25/15703.79 16505.70/16046.99
2014 17097.42/17350.64/16934.43 18103.45/17067.59 18288.63/17579.27
2015 16528.03/16933.43/15942.37 17901.58/17116.73 17790.11/16545.67
2016 18396.57/18551.54/17992.21 19987.63/19138.79 21169.11/20412.80
2017 21981.77/22419.51/21709.63 24876.07/23921.90 25449.15/23509.06
2018 25916.07/26769.16/25754.32 25980.21/21712.53 26155.98/25208.00
2019 26198.26/27306.73/25978.22 28701.66/27325.13 27102.34/18213.65
2020 28439.61/29199.35/26537.01 30637.47/29599.29 33259.00/30547.53

結果、この表からもわかる通り12月時点で9月より株価が上がっているものが多めでした。日経平均の比較時と似たような印象ですね。

なかでも代表的なのが2011年のチャート。セルインメイそのもので、5月ごろから下がり始め、再び9月ごろ機に上がり3か月後の12月も6か月後の翌3月も上がっています。

引用元:TradingView

とはいえNYダウでも注意点がひとつ。それこそ日経平均の比較でもご紹介した3月の株価です。実はNYダウでもまた、3月ごろにかけて一部下がっているものがあるんですよ

たとえば以下のチャートを見てみてください。

1枚目が2006年9月に買ったとき、3か月後の12月と6か月後の2007年3月までのチャート、2枚目が2017年9月に買ったとき、3か月後の12月と6か月後の2018年3月までのチャートです。

引用元:TradingView

引用元:TradingView

大幅に下がるわけではないものの、このように少し下がるケースがいくつかあったんですよね。

そのためNYダウでの検証でも、9月に買うと3か月後の12月までは上がることが多いが、6か月後の翌3月くらいは注意しようという結果になりました

セルインメイは過信禁物だけど役には立つ!

今回はセルインメイを検証するため、日経平均とNYダウで比較してきました。

最後の結論として、セルインメイは過信禁物なものの、参考にするならとても役立つものだと思います。

投資を行う以上絶対という存在はありませんが、知識として身につけておくのは重要!ぜひみなさんもこの機会にセルインメイを覚え、参考にしてみてくださいね。