投資をしていると、誰が言い出したのか変わった言葉を目にする機会がよくあります。
たとえば靴磨きの少年や、落ちてくるナイフは掴むなといった相場格言など、知ってる人も多いんじゃないでしょうか。
今回ご紹介する炭鉱のカナリアもそのひとつ。覚えておいて損はない重要ワードです。
この記事ではそんな炭鉱のカナリアについて、詳しく解説していきます。
目次
炭鉱のカナリアとは?
いろいろ解説をする前に、そもそも炭鉱のカナリアとはなんなのか、簡単にご紹介していきます。
みなさんご存じの通り、カナリアっていう鳥がいますよね。黄色などの鮮やかな姿に美しいさえずりが特徴の鳥です。
今回ご紹介する炭鉱のカナリアって言葉は、そんなカナリアを炭鉱夫が連れていたことに由来しています。
というのもかつて炭坑内では、作業中に有毒ガスが発生することがありました。カナリアはこういった有毒ガスを感知すると鳴かなくなるので、炭鉱夫が危険を察知するために利用していたんです。
このことから投資の分野でも、炭鉱のカナリア=暴落などの危険や転換期の前兆という意味で使われています。
炭鉱のカナリアとされる指標7つ
炭鉱のカナリアについて覚えたところで、ここからは具体的にどんなものが炭鉱のカナリアと呼ばれているのかご紹介します。
全7つの指標をピックアップし、炭鉱のカナリアと呼ばれる利用など詳しく解説していきますよ。
1. VIX指数
まず最初はVIX指数です。このVIX指数とはボラティリティ・インデックスを略したもので、別名恐怖指数とも呼ばれることで有名です。
いったいどんなものか簡単にいうと、投資家の不安など心理面を反映したものですね。相場への危機感が強まるとVIX指数は上昇し、相場が落ち着いているとVIX指数は低いまま推移します。
そしてVIX指数が上昇した時は、今後急落や急騰が起こる可能性が高いとされているんですよ。このことから、炭鉱のカナリアを例えられています。
2. ハイイールド債
お次は入イールド債。債券についてはみなさん知ってるかと思いますが、なかでも高利回りな債券のことですね。
信用度が低くリスクが高い分、利回りが高くなっているんですね。別名ジャンク債とも呼ばれています。
ではなぜハイイールド債が炭鉱のカナリアといわれるかっていうと、ハイリスクハイリターンだから。リスクに敏感なため株より先に売られるケースが多く、株価より先に価格が下がりがちなんですよね。
そのため金融市場の危機を察知するのに役立つとされています。
3. ラッセル2000指数
ちょっと聞き慣れないけど、このラッセル2000指数はアメリカの小型株指数ですね。
ではなぜこのラッセル2000指数が炭鉱のカナリアと呼ばれるかっていうと、小型株は値動きが激しいから。
大型株とは違い、資金が少なく倒産リスクも高い小型株では景気の影響を受けやすくなります。そのため、一度下がると持ち直せずさらに暴落することもあるんですね。
また小型株が暴落すれば、取引先になっているような大型株も引っ張られるように悪化してしまいます。
つまり、小型株指数であるラッセル2000指数によって、今後暴落が起きるか判断しやすいってことなんですよ。
4. 銅価格
続いては銅価格。銅はさまざまな製品に使われ利用度が高いことで有名ですが、この利用度の高さから経済の指標として役立つといわれています。
たとえば景気が良ければ銅がどんどん消費されます。結果として需要がアップし、銅価格は上がるでしょう。
対して景気が悪くなってくると、今度は銅の消費が少なくなり、銅価格も下がってしまいます。
このことから、銅価格も炭鉱のカナリアとされ、今後を判断する指標になるんですよ。
5. 金価格
安全資産で知られる金。この金価格も、炭鉱のカナリアとして知られています。
というのも金は安全資産だからこそ、経済への不安や地政学的リスクなどが高まると買われる傾向にあるんですね。結果として、金価格は上昇するわけです。
つまり金価格が上がると今後市場が荒れる可能性があるってことですね。
6. 原油価格
つい最近も何かと話題になった原油。こちらもまた炭鉱のカナリアとされています。
というのも原油は、需要と供給によって価格が変動しがち。簡単にいうと経済活動が活発なときは上がり、経済活動が停滞すると下がる傾向にあるんですよね。
このことから、今後の景気を判断する指標として役立つとされています。
7. プットコールレシオ
最後はプットコールレシオ。これはオプション市場で使われる指標ですね。
まずプットは売る権利、コールは買う権利です。プットコールレシオは、このプットとコールの取引量を表した指標で、略してPCRやPCレシオとも呼ばれています。
具体的にどんなものかっていうと、この指標が高いとプットを買う投資家が多く、低いとコールを買う投資が多いってこですね。
そして重要なのが、相場に弱気な投資家は相場下落で値上がりするプットを、相場に強気な投資家は相場上昇で値上がりするコールを買うってこと。
これを踏まえると、プットコールレシオが高ければ弱気派が多く、低ければ強気派が多いってことになります。
このことから強弱感を表す指標として、炭鉱のカナリアとも例えられています。
過去の実例チャート
それでは最後に、過去の実例を見ていきましょう。
今回は2020年2月末ごろから3月ごろにかけて発生したコロナショックに着目。炭鉱のカナリアこと7つの指標が実際どのように変動したのかご紹介します。
1. VIX指数
まずはVIX指数。パッと見てわかるように、2月末ごろから一気に上昇しているのが見て取れます。
2. ハイイールド債(iシェアーズiBoxx米ドル建てハイイールド社債ETF)
こちらはハイイールド債へ投資できるETFの、iシェアーズiBoxx米ドル建てハイイールド社債ETF(HYG)。あっという間に急落していますね。
3. ラッセル2000指数
4. 銅価格(銅CFD)
次は銅価格。1月末ごろに下げはじめ、3月中旬ごろに大きく下がっている様子がわかります。
5. 金価格(GOLD)
お次は金価格。炭鉱のカナリア通り、金価格が少しずつ上昇していっていますね。
6. 原油価格(WTI原油CFD)
次は原油価格。WTI原油CFDで見てみると、1月ごろから下げ始め、2月末ごろから大きく下げているのがわかります。
7. プットコールレシオ(S&P500指数)
最後はプットコールレシオ。今回はS&P500指数で見ていきます。下がプットコールレシオで、2月半ばごろから上がってきていますよね。
プットコールレシオが高ければ弱気派が多いってことなので、相場下落で値上がりするプットが買われているってこと。その後2月末ごろから、実際にS&P500指数も下がっています。
炭鉱のカナリアで危険を回避しよう!
今回は投資において重要な役割を持つ炭鉱のカナリアについてご紹介してきました。
実際のチャートを見てみても、炭鉱のカナリアは優秀。未来を予兆する重要な指標となりそうですよね。
ぜひみなさんもこの機会にこの7つの指標を覚えて、今後の投資に活用してみてください。